EC大国・韓国の競争の激しい市場の中で、毎月40%ずつという驚異的な成長を遂げている女性アパレルオンラインストアが注目を浴びています。急成功の裏には、独特かつ時代を先取りするカスタマーサポート戦略があります。ソウルストアのCXマネージャーの言葉には、アパレルECサイトを運営する日本の皆様も手本にすべきオンラインショップ成功のノウハウが詰まっています。現在そして今後の自社EC市場で生き残る戦略を考えるヒントを得て、あなたの事業に活かしてください。(インタビューはソウルストアのユヨンジュン様、チェヒョンミン様にご協力頂きました。)
月40%ずつの成長を遂げるソウルストア(出典:seoulstore)
ZOYI: ソウルストアについて簡単にご紹介お願い致します!
ユヨンジュン様: ソウルストアは、20代前半の女性をターゲットに、流行に敏感な「ソウルのオンニ(韓国語で親しみを込めた「お姉ちゃん」)」がオススメする商品を販売するオンラインセレクトショップです。オンライン上のセレブや有名人がショップオーナーになれるプラットフォームを提供しており、ショップオーナーたちに商品や物流、コンテンツ制作やCSまで全てをサポートしています。
ZOYI: 最近EC界隈で非常に儲かっていると騒がれていますが、業績の自慢をお願いします!
ユヨンジュン様: 2015年5月にオープンしてから、早いスピードで成長を続けています。現在、毎月40%の成長率を誇り、インスタグラムなどのインフルエンサーが50名以上活動しています。
ZOYI: 素晴らしいですね。ズバリ秘訣は何でしょう?
チェヒョンミン様: ソウルストアは、「ソウルのオンニ」というペルソナが地元のお姉ちゃんのように、お客様との間に親近感のある関係を作り出しています。「ソウルのオンニ」と仲良くなったお客様は、他のオンラインストアに離脱してしまう可能性が少なく、オススメした商品も思ったよりも簡単に購入してくださいます。つまるところ、お得意様やロイヤルカスタマーを増やすことがオンラインショッピング成功の秘訣だと考えています。
ソウルストアのユヨンジュン様(上)とチェヒョンミン様(下)
ZOYI: 具体的にはお客様との関係をどのように築いていったのでしょうか?
ユヨンジュン様: お客様との接点の最前線でCX(Customer Experience)チームが積極的にお客様とコミュニケーションをとっています。ソウルストアのCXチームは「ソウルオンニ」というペルソナを活用して問い合わせをしたお客様を積極的にサポートし、ファッションに関する様々なアドバイスを受け付けています。「ソウルオンニ」は、言葉の通りファッション全般について精通し、ファッションセンスが優れているお姉ちゃんです。お客様が「ソウルオンニ」とプライベートな関係を築いていると感じてもらえるよう努力しています。このようなコミュニケーションを実現させるために、電話とチャットどちらも導入しています。
ソウルストアは「ソウルのオンニ」コンセプトでお客様とコミュニケーションをとっています。
ZOYI: 電話とチャットをそれぞれご使用されて、どのように感じていらっしゃいますか?
チェヒョンミン様: 電話は、問い合わせをリアルタイムで処理できる点が大きなメリットですが、話して伝えるぶん応対時間も長くなり、精神的なストレスを感じることもあります。一方、チャット応対は全ての問い合わせを1人で処理できるほど効率的で、オペレーターの満足度が高いです。お客様と親身な関係を築けるというメリットもあります。このような理由から、ソウルストアでは、電話問い合わせの営業時間を5月中旬から8時間から3時間に減らし、チャット応対で代用することを決定しました。
ZOYI: 他サービスの接客ツールも使用したことがあると伺いました。
チェヒョンミン様: 当初は、カカオトークのイエローIDを導入しました。イエローIDは、お客様と友達になり、カカオトーク(日本でのLINE)をするかのように対話できるため、親密に繋がることはできました。しかし、顧客情報の連動機能がなく、問い合わせしたお客様の買い物履歴が分からず、商品画像のキャプチャをお願いしたりと面倒でした。オンラインストアのデータベースと連動が難しく、顧客応対の記録を活用するにも限界がありました。オンラインストアでは、滞在時間が長いほどコンバージョン率が高まるのに、顧客応対のためにカカオトークのプラットフォームに移動しなければならない点は不便だなと感じていました。
ZOYI: channel.ioを選んだ理由はなんですか?
ユヨンジュン様: チャネル(channel.io)では、問い合わせされたお客様の会員情報と現在ご覧になっている商品を確認できるので、お客様のお困りの点を迅速に解決して差し上げられる点と、反復される質問を保存しておき「テンプレートボタン」で呼び出せる点が便利です。ソウルストアは問い合わせの50%が定型的な質問なので、応対負担が大きく減りました。また、チャネルは会員情報が連動されるためお客様の趣向や興味に合わせて、購買に誘導することができました。
カスタマイズされたチャネルのアイコン(問合せボタン)(イメージ:seoulstore)
ZOYI: チャネル導入後、何か変化はありましたか?
チェヒョンミン様: 素早い応対が可能になったため、お客様もカスタマーサービス担当者もとても満足しています。特に、定型的な質問を簡単に処理できるようになったため、お客様との仲良くなるためのコミュニケーションにさらに集中できるようになりました。以前は、顧客の不満やクレームを減らすのが目標だったとすれば、現在は顧客情報を活用して購買転換に集中できるようになりました。 チャネルに集まったデータも、上手く活用できています。例えば、パンツのサイズについての問合せが多かったため「デニムのフィット感の相談は私に任せて!」というコンテンツを作成し、「お悩み解決のスペシャリスト ジョンミンオンニ」というコーナーにアップロードしました。お客様の声にきちんと耳を傾けているということがアピールでき、コンテンツへの反響もすごく良かったです。
ZOYI: channle.ioチームに期待することはありますか?
ユヨンジュン様: 開発中の自動エンゲージメント機能(話しかけ機能)です。サイトに訪問したお客様に、自動でこちらから声をかけて適切な提案ができれば、購入するか迷っているお客様を説得できると思います。また、CRMメニューからプッシュ広告を送れると良いと思います。お客様にイベントなどの告知を知らせることが多いのですが、チャネルで対話するように気軽に伝えることができればさらに効果的だと思いました。
ZOYI: お客様との関係構築など、ソウルストアは今後どのような方向に向かおうとしているのですか?
チェヒョンミン様: EC市場は受動的なカスタマーサービスの時代はもう終わり、顧客体験の向上に積極的に取り組むチェヒョンミン様: EC市場は受動的なカスタマーサービスの時代はもう終わり、顧客体験の向上に積極的に取り組むカスタマーエクスペリエンスの時代が到来したと考えています。究極的には、お客様のファッションに関する疑問点を一番最初に質問してくれるようなファッションキュレーションコマースになりたいと考えています。
チャネルでお客様の興味を把握できます(イメージ出典:soulstore)
ZOYI: その目標を達成するための、具体的な計画はありますか?
チェヒョンミン様: 3つの段階を考えています。まず、最初の段階は、増え続けている問い合わせに対応できるCXチームを構築することです。限られたメンバーで顧客一人一人と親密な関係性を維持したい場合、どうしても効率性を高める必要があります。CXチームは、効率の悪い電話応対の比重をさらに減らし、チャットの応対の比重を増やすことでチームの応対能力を高める計画です。
次に、インタラクションです。ソウルストアでは、オンニ達(インフルセンサー)が各々の店を構えています。今後はオンニ達がそれぞれ直接応対できるように企画しています。先日、「ハンビョルストア」という店でショップオーナーのハンビョルさんが直接チャット対応するというキャンペーンを実施したのですが、SNSでも取り上げられ非常に大きな反響を呼びました。
最後に、キュレーションです。買い物のご相談が必要なお客様に必要な商品やコーディネート方法などをオススメするのですが、ソウルストア内の商品に関する情報を徹底的に分析し、チャネル(channel.io)に問い合わせがきたらCXチームが商品を専門的にキュレーションする予定です。
ZOYI: 最後にソウルストアの今後のビジョンについて教えてください。
ユヨンジュン様: ソウルストアは「ソウルに関するコンテンツを持つインフルエンサーに持続可能な方向性を提供する」というビジョンを持っています。今後は、ソウルに纏わる話を多様なコンテンツにしていきたいと考えています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いかがでしたでしょうか? 日本よりも5年進んでいると言われる韓国のEC市場のトレンドについて、垣間見ることができたかと思います。このような個性の溢れるキュレーションコマースやインフルエンサーがお客様と一対一の親近感のある関係づくりをしていくことは、益々競争が激化する日本のEC市場においてもライバルサイトとの大きな差別化ポイントを作ることになります。日本のECでもこのようなトレンドが始まろうとしています。
そのような親近感のある関係作りを実現するツールが、ウェブ接客チャットです。自動化や広告の表示機能ももちろん大事ですが、オンラインショップが上記のようにお客様と絆を築くためにはチャットで親身なコミュニケーションを図ることが欠かせません。
今後も韓国・日本を中心とするECマーケットでの最前線に注目し、お客様のビジネスに有益な情報を届けていきます。